この時期によく見る PC 関連のニュースサイトの去年を振り返る記事を読んで、 よく見かける話題をもう一つ。去年一年は PC が売れない年だったと言う話について。
 アテネオリンピックが開催され、その特需を見込んではみたものの、 実際売れたのは、いわゆるデジタル家電と言われる 薄型大画面テレビと HDD レコーダなどで、 PC メーカーサイドは同音異語に「デジタル家電に取られた」と 宣わっているそうです。確かに個人的にも仕事で関わったメーカの方からも このせりふはよく耳にしました。

 もちろん消費者の財布の中身も無限ではあり得ないので、 「あれを買えば、これは買えない」と言うことはあるでしょう。 しかしながら、薄型大画面テレビに関しては購入層は、 まだまだある程度以上裕福な層が中心だと思われ、PC の購入層とかぶるのは、 価格がこなれてきた HDD レコーダーを購入する層が中心だと考えられます。
 確かに最近、PC で売れ筋の機種はと言うとすべて TV の視聴・録画機能を搭載していて、 だから同機能を提供するデジタル家電、要は HDD レコーダーが去年は売れたから、 PC は売れなかったんだという理屈も理解できますが、 しかし、理由はそれだけでしょうか。

 思うに日本の PC ベンダは、未だに IT バブル時代のように 「猫も杓子も PC を買うんだ」と考えている節があります。 IT 産業に関わらない人も PC を必要なんだと思っているからこそ、 まだ「使いやすさ」だとか「家庭でも使える」なんてことを 売りにしているのではないでしょうか。
「いい加減に目を覚ましましょう」
 IT バブルの時代にはそんな幻想も確かにありました。 実際、ウェブやメールというコミュニケーション手段が根付き、 そのおかげで PC のすそ野が爆発的に広がったのは確かです。 しかし、それでも PC を使わない人は、未だに使わないのが現状です。 いつまで、そしてどこまですそ野を広げようとするつもりですか?
 確かにそういう努力もゼロにしてはいけないと思いますが、 当然の事ながら無限には広がりません。生まれたばかりの赤ちゃんに すぐに自分専用の PC を与える時代にはおそらくならないし、 全くの初心者が PC を使えるようになるまでにまたがなければならない 敷居の高さは決してゼロにはならないのです。

 もし、ウェブのような革新的なソフトウェアが再び生まれ、 そのとき PC のハードウェアとして使い勝手がもっと上がっていれば、 またすそ野もまた広がります。
 まだ使っていない人も一緒くたにして PC を使わせる商品ばかりを考えるのではなく、 今現在使っている人、使うことが当たり前になった人のためのより良い製品を考える。 IT バブル時代の幻想を捨て、 そういう方向に転換する時期にきているのではないでしょうか?
 去年、個人のノート PC を更改する必然性が発生したとき、 魅力的だと思える機種があっという間に二、三の機種に 絞れてしまいました。これだけ、商品があふれているにもかかわらずです。 仕事で PC を使う立場にいる関係上、PC と言う製品に精通している方だと 言うこともあるでしょうが、それでも自動車などの他の商品では、 ここまで極端ではないと思うのです。それほど PC の商品としての バリエーションは現状少ないのです。

 デジタル家電が売れたから、PC は売れないなどということは、 デジタル家電にできること以外で、魅力的な機能は 今の PC にはないですと言っているようなものです。
 詰まるところそれが原因です。
 メーカの方々は、こんな事、わかっていて言っているのだと思いたいなぁ…