匿名の人たちの情報は集めれば集めるほど、情報としては価値をなくしていく。 これは「グルメ情報サイト」などが顕著な例です。

 あれを食べたければどこどこのお店がおいしい。
 そんなよくある口コミを集めて情報を提供する。 一時、いや今でもこういうサイトはいっぱいありますが、 個人的には今やお店の地図をみるか運が良ければ割引チケットが手に入る程度にしか 使っていません。 端的に表現すると「広告付きの職業別電話帳」みたいなもんです。
 本来、サイトが提供するはずの口コミで広まったグルメな情報など 全く期待していないわけです。

 なぜこうなるのでしょう?
 まず明確な理由の一つは匿名の情報を無制限に集めるからでしょう。 掲示板のようにお店の情報を書き込めば一票。 無料の会員制で書き込みを制限しているような場合もあるようですが、 そんなものが機能しているように見えるサイトを知りません。
 またサイトとしての社会的体裁があるので、酷評は削除されていきます。 しかし、不思議なもので、酷評は削除されますが、 明らかに誉めすぎというのは削除されにくい傾向があります。
 なにより情報を無制限に取り込むので、サイトを運営していくためにどんどん運用費が 膨らみますから、当然収益がないと廃れる前に潰れるわけで、 その収益モデルとして「広告」に頼ることになることが、今はほとんどなわけです。 グルメサイトの広告といえば、飲食店や食料品の広告が多くなるのは当然で、 こうなるとサイトで上位に紹介するから広告を出してもらうことを お願いするようになるのもまたこれ当然で、 結果として「口コミのグルメ情報を提供する」というサイト本来の存在価値は どんどん減少していくというのが必然となるわけです。
 結果、大きくなればなるほど、サイトが本来提供するはずの情報が 陳腐化していくという奇妙に思える現象が起こってしまったわけです。 論理的に考えると皮肉な話です。

 現実世界で価値ある情報とはある程度量として形成された場合、 本来、次には質を維持、もしくは高めていく努力をしていかなければなりません。 しかし、インターネットの場合、現状のように匿名の情報を集め続ける限り、 なかなかこれは難しいと考えざる得ません。

 一手として、統計学的に情報を精錬していく方法もあるでしょう。 これはなぜかどこも大手を振ってやりませんねぇ…なぜでしょう?
 逆に常識的な統計手法はすでに適用しているのでしょうが、 その昔、NASA が予算縮小されたときに流出した大量の数学者を金融業界が受け皿になり 高度な金融商品を生み出した話があり、リーマンショック以後の金融危機で また大量に流出したはずの人材、特に数学者などは IT 業界でしっかり捕まえれば もっと高度な数学的統計手法などが応用できたのではないのか… とも思いますがすでにあとの祭りでしょう。
 こういう意味ではインターネットで提供されている情報は まだまだ統計学的にみると「幼稚」とも言え、 ここに一つビジネスのチャンスはあると思います。
 反面、数学的、統計学的に精錬された「正直な情報」というのは、 事実を多少詐称する(しなければならない)側面のある広告モデルには マッチしない可能性はあり、情報そのものが高く売れるそういう情報を選ぶ必要があります。

 まぁ個人的にこの方向の議論は苦手なのでここまでにしておいて、 こういう量として形成された情報の質を維持するための検証、 もしくはそもそも量としての情報の形成の仕方に問題があって、 ここがビジネスの種になるような気はしています。

 以上、このような分析を踏まえると、 Facebook の存在を考えてみると 非常におもしろく思えてくるはずです。
 なぜなら Facebook は「実名で登録する」ことが (強制ではないですが)前提とされており、また実際、 この前提を守らないと Facebook 内での 「自分」がうまく機能しなくなるためか実名で登録している人が多く、 また逆にそうでない人も比較的見分けやすくなっているからです。
# 無論、何らかの目的のために巧妙に人格を詐称している人もいるでしょうが、 それはまた現実社会にも存在することで、誤差の範囲でしょう。

 つまり Facebook で形成される口コミ情報は、 インターネット上の一般的な口コミ情報より精度が高いことが容易に想像がつきます。
 だからこそ今、メディアとして Facebook が 注目されるのだと思っています。
 しかし、ここで言いたいのは Facebook 万歳!という話ではなく、 情報の出自を現実社会の個人にできる限り結びつけて「一票の重み」を 作り出すことができれば情報の精度は上げられるということです。
 そして結びつけられた個人への検証を行えば、 この集合から生み出される情報の質も維持できるということです。

 さてこれをどうビジネスとして組み立てるか?
 それが問題なんですよね…長考します (^^;